眼鏡を買った。思いつきで買った。
店頭でいろいろ試していると、どうしてもいつもと同じような色でサイズで形のものを選んでしまう。
それじゃ意味がないんだ! 何かこう、気が晴れるようなインパクトが欲しいのだ!
と、眼鏡に求めるべきではない文句を内心唱えていたら、棚影から「遊んでみます?」の声。
一見、おとなしそうな店員さんから渡された一本は、蜂の巣みたいな眼鏡であった。
どことなくハニカム。さりげなく蜂蜜色。
インパクトは……ある。
そんな衝動買いの果てに驚いたのは値段であった。
レンズ込みのお値段ではなかったらしい。フレーム代も十分なかなかだったのだけど、レンズ代はますます。
内心動揺したけれど、大人なので平気なふりしてクレジットカードを差し出した。
鮮やかで巧みな視力検査をしてくれた店員さんにキャンセルは言い出せなかった。小心者。
誕生日の前借りと思えばいい。大丈夫、大丈夫、大丈夫。
そう唱えながら、「前借り」の総額を数えて青ざめる。
あれもこれもそれも前借りしてしまった。というかそもそも前借りってなんだ。自分で自分に払うものなのになんなんだ。