2023年 1月4日(水)

遊び戯れる

水戸芸術館 現代美術ギャラリー「中崎透:フィクション・トラベラー」展を観てきた。

中崎さんが運営するスペース名(プロジェクト名)といえば「中崎遊戯室」だけれど、改めて〈遊び〉〈戯れる〉中崎さんの技量のすさまじさを感じる。

遊ぶことは、案外難しい。

世の中のものをちょっといじったり、ずらしたり。不真面目テイストのゆるゆるとしたパロディの世界に引き摺り込んだり。

そういう遊びや悪戯は、考えなしの人の手には負えない。本質的に意地悪だったり、品がなかったりする人も危うすぎて絶対できない。

その点、中崎さんのユーモア溢れる表現は、二十年分の作品をぎゅっと詰め込んでも、凄みはあるのにえぐみは無くて、クスッと笑えるのに考えさせられもして、人を傷つけることなく深く刺さる。造形的にはラフなフリしてめちゃくちゃ緻密。

どうなっているんだろう。一体どんな思考回路と手順から生まれるんだろうと、中崎さんの作品を観るたびに思うし、思いながら笑ってしまう。

今この瞬間、目の前の人を笑わせるのはたぶん頑張ればできる。でも、二十年前に投げられた笑いが笑いとして二〇二〇年代に届いていることがなんだかものすごいことのように思えた。

美術の世界で遊んで、美術の作法で世界と遊んで、美術以外の世界にも染み出していく。

すごいなぁ、凄まじいなぁと繰り返し思いながら、そのことばかり考えていたので今日書いた原稿のテーマも「遊び」になった。






それにしても、新年最初の開館日は、知った顔ぶれで大賑わいだった。

知った人から知らない人を紹介してもらい、新年初名刺交換の場面もあちこちで。

嬉しいな、楽しいなと思いつつも、年末から今まで限られた人とばかりやりとりしていたので、社交力が激減中。

どんなテンションでいればいいんだっけ? こんな話題で大丈夫? と不安になってはへにゃへにゃして、あっという間に疲れてしまった。

ここから激動の仕事が続くので、どうにか、せねば。

前へ
1月2日(月)
次へ
1月10日(火)
フィルター