午前三時五十分。
バチン! と何かが爆ぜる音がして、暗闇に包まれた。
もともと薄暗い部屋で寝ていたのだけれど、モニターや家電のランプ、常夜灯まで消えて真っ暗闇に。冷蔵庫やエアコンの運転音も聞こえない。
何かがおかしい。
停電かなぁと思いつつ、地震も起きてないし、台風もきていない。うちだけ電気が落ちたとか、犯罪的な理由で落とされたとか、あるいは心霊的な何かでいやまさか……などと寝ぼけ頭で妄想して怖くなる。
とはいえ眠くて確認するのも面倒でそのままうとうとと過ごす。
五時過ぎになり、警報システムが再起動した音が響き、電気の復旧を確認した。検索してみると、我が家も含めたわずか千世帯の超局所的な停電だったらしい。原因不明。
深夜の停電、一時間ちょっと、小さな町内。
外を見たらきっと静かな景色だっただろう。散歩でもすればよかったと後から悔しく思った。
悔しいといえば、まめのこと。悔しいというか、ジェラシーというか。
ただの猫ばかではあるのだけど、うちに来たばかりの頃の動画や写真を見返してたら、それはそれはおとなしく懐いているのだ。
膝の上に、手の上に、身体を寄せて甘えたポーズのまめ。
最近は何につけても噛むし、ぐずるし、暴君猫だ。あの頃が懐かしくて羨ましい。いったい何があったのか。愛着から執着、憎悪へのジャンプがすごい。
毎日右腕に刻まれる噛み跡は、もはや縞模様と化していて、寝るときは長袖を着るようにしている。
コミニュケーションとストレス発散が足りないのかな? と思い、新しいおもちゃを導入してみたりもした。
が、しかし、今度はおもちゃが気に入りすぎて、わたしが一緒に遊ぶまで叫びながら噛んでくるのだった……暴君。
そんな話を角打ちでしていたら、マスターに「それは猫飼いの人の自慢ってやつですね」と釘を刺された。
そうそう、停電の前、昨晩は遅くまで飲んでいた。
遠方に暮らす友人が「もし今夜千葉にいるなら、今から行くけどビール飲める?」と突然連絡してきたのだ。
思いつきで新幹線に乗り、二十二時過ぎにやってきたその人は、そのまま千葉に泊まって展示を観て地元に帰るらしい。
楽しかったけどびっくりもした。本人も本人で「まさか今日の今日で本当に飲んでくれるとは思わなかった」と言う。なんだそれは。
わたしが暮らす場はスナック的になりがち。
夏休み展がはじまってから、いろいろな人が突然やってきていろいろな話をしていく。大変だけど楽しくもある。楽しいけど大変でもある。
会議終了の週末まで、まだまだ来客は続きそう。どうなるかな。