引き出しを漁ると、金色のアクリル絵の具が見つかった。
金。金でいいのか……?
昨日の出来事を思い出す。一人ひとりの告白、傷だらけの「日」、楽しい邂逅、輝くビール。あ、ビールは金色だな。それでいいか。
決心がつき、パレットに出した金色に右人差し指をつけ、一気に「日」の文字を書く。
受け止める紙は、グレーの厚いポスター紙。
輪転機室のゴミ箱に入っていたらしく、黒インクと油が染みていて、裏には有名作家の作品がプリントされている。
千葉市美術館「とある美術館の夏休み」展で、隣り合わせで展示している書家の華雪さんと再会した。
華雪さんは作品制作とは別に、一日の終わりに「日」の文字を書く習慣を続けている。
そのときの気分で、身の回りにある素材で描かれる「日」。
日記とセットで密やかに続けられてきた活動の一端を、今回の展覧会ではそっと展示している。
そんな華雪さんが、会期中ときどき千葉市美術館にこっそり訪れては「日」を書いてるのだと聞いていてお邪魔してみた。
居合わせた何人かと挨拶する。何時間もじっくり話し、終わりに書かれた華雪さんの「日」は傷だらけの姿だった。
黒い絵の具をその辺で拾った枝につけ、ガリガリと書かれた「日」。傷跡のような筆致の上から優しく指でなぞって補修するようにしていたのが華雪さんらしい。
そのとき書いていたものと同じ紙を譲っていただいた。そこに翌日、金色の「日」を書いてみたのだ。
華雪さんに報告すると、とても喜んでくれた。
「ビール色。幸せしかない!」
美術館の帰り道に飲んだビールを思い出す。
三十八歳時期の話をした。わたしはもうすぐ三十八歳だ。どうだろう、どんな気持ちだろう。
とりあえず、ようやくちゃんと「ひとり」になれて、幸せを感じている気がする。
ちゃんとひとりになるのは、とても大変だったけれど、おかげで「寂しさ」は友人から親友になり、もはや伴侶になり、その塩梅がとても自分らしくて、大変落ち着く。
孤独だなぁと思うのは、ひとりでいるときより、その味わいを共有しようがないときだ。
賑やかで穏やかで静かな生活の中にいて、聞こえてくる声はとても心地よい音量なのだけど、そのよさを他者と分け合うことはできない。なにせひとりなので。というジレンマ。
ということで引き続き、独り占めした金色の日を過ごす。