2022年 3月9日(水)

作品問答

テーブルには封を開けていない封筒の山。あちこちに散らばる動物グッズ。片付けきれない段ボール。そして床に散らばる干からびたオクラと、まめが食べ残した煮干しの頭。

……ひどい。どうにかせねばと思うが今日は無理だと諦める。






やらねばならぬことが多い日に限ってお腹が痛くなるのはなぜだろう。

それでも無理やり仕事を進める力みたいなのは歳とともに鍛えられて、草むらを分け入るようにずいずいと前に進む。

今よりずっと肩に力が入っていて緻密だった20代の頃は、30代の先輩方のアバウトなやり方にいちいち腹を立てていた。今の自分は先輩達と同じだなぁと気づいてあはと笑う。見える景色が変わると大事なものも変わってくる。それが自然なのかも。

午後から展覧会会場の下見へ。

機材確認はできたし、気にしていたことはなんとか実現できそうなんだけど、リアルな場を見てこりゃ大変だと固まってしまう。

わたし自身に美術で表す力や欲求があるならその道に行っていたわけで、文字を書くことでしか現せない自分にとって、改めてこの企画にどう向かっていけばいいのかよくわからなくなった。

執拗な日常記録をそっとひとさまの日常に滑り込ませることがわたしのやりたいことで、本をつくって売るという地道な活動でそれは既に成り立っている。

だからささやかな個人活動がパブリックな場所に“ちゃんと”置かれてしまう怖さに直面したわけで、こういうことのケアって誰にしてもらえるのだろうかと唸った。いや、してもらえないんだけども。

そのぐらい美術館という場は強い。

美術家って本当にすごいなぁ、強いなぁと改めて感想を抱く。

わたしの場合はあくまで一介の日記書きであることを手放さず、自分の日々の大事な行為も損なわずに、この不思議な機会を乗りこなすというか、遊ぶ手立てを見つけないといけない。

美術家のTさんが「練習が大事」と何度も言っていたことを思い出した。いきなり本番じゃ、なぁ。

それについては相方役になってもらったGさんと塩梅を探るしかない。 とりあえず美味しいものでも食べようと、Iさん兄弟、Gさんとともに、初めての寿司屋に足を運んだ。美味しい。

悩めども行き詰まれども鮨は食う。年の功である。

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