午前中に水道橋に着くはずが、気づけば十四時。頭痛と目眩がひどかったとはいえ、三時間も遅れてやってきたわたしを、少しも叱らぬ相手に手を合わせ、作業に取り掛かる。
働く人がせわしなく歩いてて、歌いながらうろうろしてる人がいて、小さな居酒屋がひしめいている。こういうまちは久しぶり。わくわくする。
それに人と並んで働くのも久しぶりだ。隠れ家のようなその場所で仕事を続けた。
しばらくして電話が鳴り、ご無沙汰していた人の声を聴く。電話をしていいのやら悪いのやら、心配していた友人で仕事仲間だった。彼女の嘆きを聞いて一緒に腹を立てつつ、わたしはわたしで昨日の困りごとを正直に伝える。
「毎日淡々と言葉を紡ぎ続ける人がいて、それがわたしにはひとつの表現だと思ったんだよ。それは誰が真似してもいい手つきでもあるし、もしかしたらものすごく普通のことだと流されるかもしれない。気になって立ち止まる人もいるかもしれない。でもそれでいいと思ってる。みんなが立ち止まるものをつくってなんて言わない。そのことで悩まなくていい。悩まないでいいようにする。ずっとちゃんと話せてなくてごめんね」
電話越しに彼女からするする出てくる一言一言がよく効く薬のようで、わたしはとても安心した。そういうことを言ってほしかった。よかった。安心して取り組めそうだ。
横で聞いていた仲間が「ちゃんと話せてたようだね。よかったね」と優しく声をかけてくれて、ありがたいなと思った。さて年度末の続きへ。