着物の着付けが少し上達して一歩進み、洗濯機が壊れて二歩下がる。
汗だくの襦袢や足袋をそのまま放っておくわけにもいかず、茶道の稽古後に近くのコインランドリーまで自転車を飛ばす。
道路の向こう側に大学時代の同級生を見つけた。なんというタイミング。スーツ姿だし、仕事中のようだ。彼は近所の美術館に勤めている。
声をかけるか一瞬悩み、結局Uターンした。部屋着で洗濯物バッグを抱えた姿で挨拶したら相手も気まずかろう。
洗濯を待つあいだ、エッセイ集を読む。なんとなく食わず嫌いしていた一冊。自分の身に近いテーマの読み物は怖さもあって、読むのに勇気がいる。開いてみれば面白かった。
洗濯待ちの間には宅急便も出した。母の誕生日プレゼントは、鹿児島で出会った陶器の猫人形。背中がひらたくて表情がとぼけててかわいい。
まめはその人形を気に入っていたのだけど仕方ない。この子は四国へ里子に出すのだ。君が四国からきたのと逆だね。