目を覚ますとふさふさとした、大変立派なしっぽを持つ生き物が、音もなくわたしの周りを回っていた。
触ろうとすると逃げる。そしてまた戻ってきて匂いを嗅ぐ。ふたつのふさふさが交互にやってきてこちらの様子を伺う。
そのまま階下に降りてしばらくふさふさを見ていた。ふさふさもこちらを見る。わたしが眠気に負けて再び眠ると、ふさふさ達も眠ったようだった。
猫の姿をした妖精かなにかな……とまどろみながらふさふさを見続ける。ずっと見ていたいけど、うちの猫もわたしを待っている。帰らねば。住人たちはまだ起きない。
ドアを開けると青空。影の濃い森のような玄関。立派な髭を蓄えた人が落ち葉を掃いていて、おはようございますと声をかけると「どなた」と聞かれる。昨晩そこのおうちに泊めてもらったものですと返すと「いいですね!」と言いながらカラカラっとした笑い声が戻ってきた。
果たして会話は成り立っていたのだろうかと思いつつ、明るい住宅街を抜けていく。通勤する人の列に混ざるのは久しぶり。満員電車の気配におののく。
昨夜の記憶は半分ぐらいしかない。さあ、一日がんばろう。