ドアに鍵を差し込んでいると、奥の通りからやってきた婦人に声をかけられた。
「猫ちゃん、いつも障子から外見ていてかわいいわね。名前は何ていうの？」
障子に穴をぶち開けた上、その穴から顔を出して毎日ご満悦のまめは、最近どうも近所の話題になっているらしい。この間も犬の散歩をしている人に声をかけられた。
「あと、可愛いんだけどあれ、家の中、丸見えじゃない？ 大丈夫？」
「うーん、諦めました」
「え、あ、そう」
大丈夫かというと大丈夫じゃない気もするんだけど、まぁそこで着替えるわけでもなし、全部が見えるわけでもなし、どうにでもなれと思いつつある。
本当は家の中が見えることに対してかなり神経質な方だ。団地で暮らしていた子どもの頃、自分の家の中をひとに見られるのが嫌で、母が夜になってもカーテンをひかないことにものすごくもやもやしていた。その癖が続いている。
ただ、千葉に引っ越してからはカーテンレールのない窓とか、穴をぶち開ける猫とかによって慣らされつつある。
そんな穴ぶち開け猫ことまめは、今朝から急に元気がない。留守番続きでストレスが溜まっていた……というよりは、気だるい感じ。食欲も微妙だ。何より鳴かない。静かなまめなんて信じられない。
心配だなぁと思いながらも明日病院に行くためには仕事を先んじてするしかなく、パソコンに向かう。
いつもの十分の一ぐらいしから鳴かないまめは、おとなしくわたしの隣に座り、寝息を立てている。いつもの寝姿と変わりないのにそれでも心配だ。
まめが元気なら何もいらないよと思う。もうしばらく遅くなるのはやめよう。