厄日だ。こういう日を厄日と呼ぶに違いない。しとしと降る雨の中、開かない扉の前で呆然とした。
昨晩は不調のまめを診ていて寝不足。三時、四時、六時と起こされたけれど、まめはごはんが喉に通らない様子。いつもより鳴かないし、体温は高いしでどう考えてもおかしい。
朝九時、かかりつけの動物病院へ。ところが扉に「しばらく休診」の文字。看護師さんに聞くと、先生が肺炎になってしまったらしい。そこから紹介された別の病院に向けタクシーを拾ったものの、やはり急な休診だと途中で知る。近所の動物病院も休院日。参った。
結局、少し離れた病院まで再びタクシーで乗り付け、猫風邪と歯周病の悪化が原因だと診断されたまめ。猫の平熱は高いとはいえ、三十九度八分と聞いてびっくりした。注射を打ち、薬をもらう。風邪が治ったら抜歯をした方がいいらしい。大変だ。
そして、さらなる試練が。
道中どこかで家の鍵を落としたらしい。病院から戻ったものの、家に入れない。冷たい雨が降っている。大家さん先生は不在で連絡がつかない。不動産屋さんも合鍵を持っていない。いよいよ困った。
結局、鍵屋さんを呼ぶことになった。到着を待つ間、悲しい気持ちに襲われる。雨の中、軒下で、風邪をひいて苦しそうにしている猫とふたりきり。申し訳なさでいっぱい。最終的に鍵屋さんに鍵の破壊と付け替えを頼み、お値段は三万円超。高い。高いが、家に入れるって素晴らしい。まめもわたしも喜ぶ。
夕方、用事から戻った大家さん先生が、沢山のパンとサラダを差し入れてくれる。ここ最近の忙しさを見てたので「疲れたんでしょう、鍵をなくすなんて」とのこと。まめのことも心配してくれた。
「先生っていうのは、あだ名みたいなもんだと思って。本当の先生扱いしないで。友達だと思って。わたしは友達だと思ってるし、そう頼ってほしいわ」と言ってもらって泣きそう。今日は疲れたのでとても沁みる。恐縮だけれど、わたしも友達だと思っている。
まめはというと、「とにかく食べられれば、栄養バランスは気にしなくていいから。おやつでも猫缶でも」と獣医さんからお墨付きをもらい、贅沢生活のはじまり。薬も効いて落ち着いている。疲れたけどそれが何より。