2022年 11月6日(日)

双子とヤギ

「ふぎぎぎいぃぃぶるーーん!」

わたしがその場を離れた途端、聞いたことのない音がして、ギラついた目のロバがこちらを見ている。

どうやら「その飯は俺によこせ。他にやるんじゃない」ということらしく、手に持っていたロバ用のフードをすべて彼に明け渡した。

猫にもロバにも同じ扱いを受けるのは何故なんだ……と思いつつ、ロバの尻に敷かれることもやぶさかではないのでニヤニヤしてしまう。






週末は取材で那須を巡っていて、最後は観光牧場にたどり着いた。メインは動物ではなくイベントなのだけど、居ても立っても居られずにこっそりロバ・ヤギ・ヒツジを見つめて蹄欲を満たす。

今回の取材は色々面白かったけれど、関西で双子を二組(つまり四人)育てる編集部メンバー(男性)に「上の二人を連れて行くので取材中見てて欲しいです」と言われたのが印象的で。喜んで引き受けた。

性格の違う五歳の二人と楽しく過ごさせてもらったし、わたしはそれが嫌でないのでいい体験だった。

そういう分業はへんてこで良いし、どんどんやったらいいと思っている。編集長としても。






子どもは面白くて好きだ。一方で昔から自分自身が子を産んで育てるイメージを抱いたことが一度もない。

わたしにとってはそれが自然だし、違和感がない身体と人生のあり方なんだけど、そのことを口にするのがすごく難しい。どうやら少数派に当たるらしいと感じて三十年以上が経った。

何度もリフレインしてしまうのは、同世代の女性に言われてきた「あなたみたいなのがいるから少子高齢化が進む」とか「子どものいない女性はリーダーになるべきではないい」というフレーズ。

急に国の代弁者のように振る舞う、彼女達の一人ひとりを理不尽で恐ろしい怪獣のように感じて距離を置いてきたけれど、今になるとそう言わせてしまう世の中とか環境とか構造とかに毒があるのだと思うようになった。

(もちろん少子高齢化は大きな社会的な危機であり転換点であるけれど、それが個人に帰属するものではないのは自明のことだ!)

そんな大きすぎるスローガンを小さな身体に背負うことなく、一人ひとりがそれなりに生きられるように、わたしはわたしの仕事をしていきたいし、しているつもりだ。

それは今日、那須で子らと遊びながら取材したことと何も矛盾しないと信じてる。

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