器の中には、水と茶巾と茶筅。
それぞれを取り出したら、茶巾から滴る水音をしっかり響かせる。
絞って、折って、流して。
夏に涼やかさを演出する「洗い茶巾」というお点前を教わりながら、なかなかすごいなと思う。お客様が口をつける茶碗の中で、茶巾を洗ったり絞ったりするだなんて。
初心者のわたしにとって、お茶の所作には驚くことばかり。
茶匙を畳に置いたり、濃茶を回し飲みしたり。現代の日常生活だったらまずやらない。
そもそも空間も道具も人も清浄で、茶席に集まる人同士の信頼関係も特別なものという前提がお茶の世界にはあるのかもしれない。興味深いなぁと思いながら茶巾を絞った。
窓に打ち付ける雨の音がすごい。
「台風だしお稽古も中止にしようかしらと思ったんだけど、あなただけならどんな天気でも来れるわよね」
大家さん先生が笑いながらお茶を飲む。
今日はわたし一人の教室の日。そしてわたしから先生のお宅まではドアツードアで十歩足らず。
「どんな天気でも来れますよ」と言いながら、その後、わたしも先生が点ててくれたお茶を頂いた。ふたり教室は楽しい。
台風は夜になってから本格的に訪れ、排水溝が一瞬逆流するというプチ事件以外は何事もなく去っていった。
あと台風の中、オムライスを食べるのは美味しそうだと思って食材を用意したのだけれど、気づけばチャーハンの上にトマト卵炒めを載せたものができた。
それはそれで美味しかったのでよし。