酒癖がよくない。酔うと簡単に記憶を無くすし、どんどん加速がついて飲みすぎてしまう。
ということを何度も失敗して学び、飲みすぎないように飲みすぎないようにと頑張ってきた。ここ二、三年は特に。
が、しかし、昨日は久々にやってしまった。目を覚ますと見知らぬ一室にいた。
都会のホテル、キングサイズベッド。そして隣に見知らぬ人……ということは流石になく、一人でコートを着込んだままベッドの上に転がっていた。
テーブルには潰れたマドレーヌとホテルの領収書。コートはよく見ると裏返しで着ていた。謎が多い。
そこにはたしかに一人で入った記録があり、そして普段なら泊まらない値段の部屋だと気づいて驚愕する。綺麗だしおしゃれだし立派だった。
酔って疲れて帰ることを諦めて、一人で宿をとったらしい。よりによってなんでこんな高いところに。酔ったわたしの判断が富豪めいていて悲しい。どうせならシラフの時に泊まりたかった。
もともと夜遅くなる予定ではあったので、まめのご飯もトイレも大丈夫なように準備はしておいたけれど心配だ。どうしよう。
ガンガン痛む頭を抱えてスマホを見ると大家さん先生からメッセージがきていた。
「おはよう。昨日、帰れなかったんでしょ? まめ、見ておこうか」
エスパーかな、と思いながらお願いする。ありがたい。それにしてもどこまでお見通しなのか。
もう若くないんだから本当に気をつけよう。と、昨晩絡んだかもしれない各所の顔を思い浮かべながら反省して帰途に着く。
家に戻り、まめの熱烈歓迎を受けつつ、ふたたび布団に潜ると障子破りの音がまたしても聞こえてきた。怒れる立場ではもはやないので、見守りながら寝込む。
そのうちまめも寄ってきて一緒に眠る。寂しかったのか寒いからか、今日は一日ずっとくっついてきて数ヶ月ぶりに膝にも登ってきた。
この子のためにも深酒はやめよう。と、誓った。本当にやめよう……。