今日は風がなくてよかった。障子を開けると枯れた紅葉が見えて、冬の景色も悪くないなと思う。
バターになりそうなほど働いた末にたどり着いた週末。千葉公園の茶室を借りて外稽古の日。二世帯住宅の住人兼生徒であるわたしは、朝からラストまでお手伝い担当だ。
朝、大家さん先生の夫に車で送ってもらい、運び込んだ茶道具を並べたり、洗ったり、お湯を沸かしたりして、他の生徒さんも含めた稽古の手伝いをする。途中で気づいたけどこれ、普通にイベント運営である。上手に着られなかった着物と長時間の正座がわたしの体力を奪っていったが、なんとか倒れず一日を終えた。
先生は先生で前日に政治的にハードな催しがあったらしく、その疲労困憊ぶりをぼやいていた。そんなこんなでへろへろの師弟は、他の生徒さんがいなくなった昼休憩、縁側に並んでパンを食べ、ぼそぼそと語りづらい人生談を交換した。
両親より少し年上の大家さん先生とこんな話をすることになるとは。
今朝、M氏を大家さん先生に紹介した。「よろしくお願いします」と頭を下げる二人を見て、親族でもないのに面白いなぁと思った。ちなみにM氏のこと、親にはまだちゃんと伝えていない。
昼食の後に一服点ててくれた先生は、「なるべくうちにいてちょうだいよ。でも引っ越ししたくなったら遠慮なくね」と、矛盾したことを言う。帰り道には「わたしがお茶の先生になるなんて」「わたしがお茶の生徒になるなんて」と言い合って奇縁を確認する。本当に不思議だ。
最近、我が家のトイレは大家さん先生のはからいでピカピカになった。壊れかけていたトイレ本体だけでなく、タオルハンガーやペーパーホルダーまで新品にしてくれた。そういうところが大好き。気遣いがさすがだ。
今週の鍋は、野菜たっぷりのブリ鍋。前回の豆乳鍋と並ぶ美味しさだった。M氏の畑からは小松菜と水菜がやってきた。
平日目まぐるしく働いては週末に労う鍋もまたイベント化している。なんとなくはじめから家族感があって不思議である。彼もまた奇縁も奇縁の人。
「ああいう人は、男性にも女性にもすっと馴染むのよねぇ。百貨店の職場にいるタイプだわ」と大家さん先生はM氏を評した。
「そう、ああいうぽそっとした、ふわっとした底抜けに優しい人、好きなんです」と、わたしは茶室の庭を眺めながら返事をした。
そんなこと、あまり口に出したことはない。公開日記に書いたこともない。パートナーに関することは別れない限りは記載しないのが自分のルールだったはず。なんだか心境の変化を感じて興味深く思う。