2022年 6月12日(日)

橙色の爪

朝一番でまめを病院に預けた。手術して一泊して迎えに行くのは明日。

わたしが家を空けることはあっても、まめが家を空けるのは初めて。そわそわする。寂しい。遊びに行く気も起きず、かと言って仕事も進まず、お酒は明日まで禁じていて、自分の無趣味ぶりを思い知る。

まめがいない間にできること……と思い、寝室と居間の大掃除をした。ベッドを動かして掃除機を隅々までかける。まめの寝床にこびりついた猫毛を剥がし、ベッドカバーを洗濯乾燥機に突っ込む。台所用品を買い足して少しだけ整理もする。

それだけだと時間が余るので久しぶりにマニキュアを塗ってみた。ちまちま塗っては、LEDランプに当てて硬化させる。まめがいたらおちおちできない作業だ。






気づけば外が暗くなっていた。掃除して爪を塗って昨晩の残りのカレーを食べた後で寝てしまったらしい。隣にまめがいなくてやはり寂しい。

先週から読みはじめた有名な猫マンガエッセイも30巻すべて読破した。たくさんの猫を拾ったり預かったりする暮らしを描いているのだけど、後半になるにつれ登場する猫たちも高齢化し、どんどん亡くなっていく。かわいいかわいいと眺めていただけに喪失感がすごい。






猫は初めてだけど、いままでたくさんの小動物と生活してきた。動物は楽しい時間をくれるし、同時に病や老いや死の現実的な姿を見せてもくれる。

まめはFIVキャリアで、猫エイズが発症するまでは大丈夫と思っていたものの、感染してるだけでも免疫力は少しずつ弱っていくそうだ。歯肉炎や口内炎を起こしやすいのも、家猫一匹生活なのにあっさりウイルス性の猫風邪をひくのも、関係なくはないと思う。

目の前の柔らかくて若々しい生き物は、生まれたときから死に向かっている。猫の方が人間よりもペースが早いだけで、わたしだっておそろいである。だから長生きするわたしが面倒をみるわけだし、いつでも覚悟しておこうと心に決めたのだけれど、最近は涙腺が脆くて決壊しがち。

まめよ、はやく帰っておいで。帰っておいで。夜になって爪先の橙色が派手すぎる気がして不安になる。昔から好きな色だけど、若いつもりでいた精神と確実に皺を刻んでる身体の差分にちょっとぎょっとしたというか。

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